12月12日、アミノバイタルフィールドで行われた関東学生1部リーグTOP8とBIG8の入替戦『チャレンジマッチ』。
BIG8全勝1位の立教大学ラッシャーズはTOP8全敗8位の専修大学グリーンマシーンと対戦。28対21で立教大が競り勝ち、1年でTOP8復帰を決めた。
昨年12月13日に逆の立場で対戦し、BIG8への降格を強いられた立教大学にとっては、雪辱のために戦ってきた1年間だった。
「1年間、ご声援ありがとうございました」
整列したラッシャーズ戦士たちの前に立ち、スタンドに深々と頭を下げた主将P杉山慶多〔4年)の声は、昨年度の納会時に新主将として挨拶に立った時よりも太く、力強く、しゃがれていた。
1年間、声を張り上げ、チームを鼓舞し続けてきた証である。
幼稚園年中の時にフットボールを始め、立教新座高校時代にも主将を務めた。当時の杉山はボールキャリアをことごとく激しいタックルで仕留めるエースLBでもあった。立教大では1年時から主力で、アンダー19日本代表候補にも選ばれた。
世代トップラクスの選手として活躍していた杉山が負傷に見舞われたのは昨3年時のリーグ戦中だった。
『今後はLBのようなヒットを繰り返すポジションではプレーしないように』と、医師から宣告された。
「あの時はもうやめてしまおうと思いました」。
杉山は当時の心境を振り返る。
しかし、監督、コーチ、チームメイトたちと話をする内に、「今までフットボールをプレーすることができていたのは自分一人の力ではなく、周囲の存在があったからだと気づかされました」と、杉山。もう一つの特技だったパンター(P)としてプレーを続ける道を選択した。
中村剛喜監督はLBとしてプレーできなくなった杉山に敢えて主将を任せた。
今季、杉山が掲げた目標は「日本一のチームを作る」だった。
今年の立教大が所属すた関東学生1部BIG8は学生日本一を決める甲子園ボウル出場権のないリーグだった。
しかし、チームのスタンダードを一度下げてしまえば、今年、甲子園ボウル出場権のあるTOP8に昇格したとしても、来年はマイナスからスタートしなければならなくなる。今、自分たちができることは、どんな舞台にいたとしても『ラッシャーズは常に日本一を目指すチームである』ということを、自分たちの取り組み、態度によって後輩たちに示すことだと考えた。
高校時代は「プレーで引っ張るタイプ」の主将だった。しかし、今の杉山には、勝負どころでロスタックルをすることも、ターンオーバーを奪ってチャンスを作りだすこともできない。
杉山はチームの心を一つにするために、毎日130人の部員全員に、一人一人声をかけることを心がけた。練習中、選手一人一人に目を配り、気づいたことを伝え、話を聞くようにした。
「杉山のリーダーシップは独特で、一見、頼りなく見える時もあったが、下級生のやる気をうまく引き出していた」
市瀬一ヘッドコーチは、リーグ終盤戦の苦戦を乗り越えられたのは、杉山が下級生を巻き込んだ一体となったチームを作ったからだと言った。
「何が正解なのかわからない中で、毎日考え、悩んだ一年でした。結果が残った今、初めて間違いではなかったと言えます。18年フットボールをしてきた中で、一番充実した一年でした」。
試合後の杉山はそう言って胸を張り、目に涙を溜めながら笑顔を見せた。
チャレンジマッチの試合の詳細は、12月28日発売のデジタル雑誌月刊ハドルマガジン2016年1月号vol.11にて、写真と記事+動画リンクでお伝えいたします。