日本大学フェニックスが本気で生まれ変わろうとしている。
3月13日、練習開始時のハドルで道明康毅副部長より吉江祐治総監督、中村敏英監督、小林孝至助監督の就任が選手たちに伝えられた。
日大1983年度卒の吉江氏(現役時WR)は卒業後、日大鶴ヶ丘高校の教諭として同校フットボール部を指導。1987年度、1990年度と2度、クリスマスボウル優勝に導いたのをはじめ、現在まで春季関東大会出場11回(準優勝2回)、全国大会出場12回の実績を持つ。また、アサヒビールシルバースターでは選手として2度、コーチとして1度、ライスボウル制覇を経験している。
日大1990年度卒の小林氏(現役時RB/SB)は現役時にライスボウル3連覇に貢献。卒業後プレーしたアサヒビールシルバースターでも主力選手としてライスボウル2連覇を達成した。1994年に佼成学園高校の監督に就任。2016年にクリスマスボウル初出場初優勝を遂げて以来、昨年まで6年連続でチームをクリスマスボウルに導き、3連覇を含む4度の全国大会制覇に導いている。
新監督に就任した中村氏は日大1995年度卒。現役時はWRとして活躍し、卒業後オンワードオークス、リクルートシーガルズでプレー。2005年度には選手としてライスボウルを制覇。2006年に現役引退後はオービックシーガルズで攻撃コーチとして指導にあたり、2010〜2013年シーズンの4連覇に貢献。2017年からは関西大学で攻撃コーディネーター、2019年にヘッドコーチに就任。2020年は東京大、2021年はエレコム神戸ファイニーズで攻撃コーディネーターを務めるなど、様々なカテゴリーやチーム文化の中での指導を経験してきた。
総監督、監督、助監督、そして昨年就任した平本恵也ヘッドコーチと、一見すると誰がトップかわからないのではという声も聞かれるが、役割分担は明確だ。
「肩書は総監督ですが私は引き続き高校の指導が主になります。フェニックスにおいては現場で指導する中村監督と平本HCのサポート役です。小林助監督も同様です。また、付属校の教員として、たとえば、フェニックスが付属校のフットボール部同士の交流の場を提供したり、技術指導をする場を設けたりするなど、付属校を含めた日大全体の育成、強化を図っていけるような取り組みをしていきたいと思っています」
吉江総監督は自らの立ち位置を説明すると同時に、付属校も含めた『オール日大』強化の構想も視野に入っていることを明かした。
小林助監督は日大とはまったく異なる佼成学園に勤務し、監督を務めているが、2つの立場は明確にパーテーションを切っている。
「当たり前のことですが、これまで通り生徒の進学先は生徒の意志を尊重し、日大への進学を強制することはしないという条件で引き受けました」
「平本HCがやってきたチームづくりを踏襲した上で、選手、コーチ陣にいいアドバイスができればと思っています。選手を引退後、Xリーグのチームや関西大、東京大でコーチをしていた時も、いつか母校に還って恩返しをする時のために知見を得ておきたいという思いは常に持っていました」
中村監督はこれまで積んできた経験のすべてを懸けて、平本HCと共に新しいフェニックスを創っていく考えだ。
「半年間、HCとして指導してきた中でどうしても足りない部分が見えてきました。その部分をサポートしていただける体制づくりを大学やOBの方々に相談をしてきた中で、大学が今回の体制をつくってくれました。吉江総監督には私自身、中学の時から指導をしていただいたこともあり、なんでも相談に乗っていただける安心感があります。小林先生は私の恩師でもあり、私も気兼ねなく相談できる間柄です。中村監督とは今までほとんど交流はありませんでしたが、お互いに遠慮することなく率直に意見の交換ができています」
平本HCも新たに加わったコーチ陣に全幅の信頼を置いている。
また、チームの運営、大学との連携を担う役割として日大職員の中川浩志コーチ兼チーフディレクター(1996年度卒)、五十嵐亮ディレクター(2007年度卒)の就任も同時に発表された。
昨年の日大は1勝3敗7位と低迷した。シーズン直前に指導者が交代し、心合わせが間に合わなかったことが大きな要因の一つだった。新コーチ陣にとって最初の仕事は選手からの信頼を得ることだ。
「学生が主役のチームづくりに挑戦します。まずは学生一人ひとりの話をしっかり聞くところから始めていきたいと思っています。再生や再建ではなく、学生と共に新しいフェニックスを創りたいと思っています」
中村監督は選手との対話から新生フェニックスを創っていく考えだ。