4月28日、BIG10カンファレンスで長年主審を務め、現在はESPNのルールアナリストとして活躍しているビル・レモニア氏による関東審判部およびチーム向けのルール講習会が都内で行われた。レモニア氏の講習会は2007年の第3回IFAF世界選手権川崎大会以降、毎年行われ、今年でプライベートも含めて14回目の来日。アトランティック・コースト・カンファレンスで長年フィールドジャッジを務め、現在はインスタントリプレーオフィシャルとして活躍するビリー・ベケット氏とともにホールディング、パスインターフェアの判定基準、腰から下へのブロック及び不正なブロック、ターゲティングについて実際の映像を見ながら2時間のレクチャーが行われた。
ホールディングのカテゴリーは以下の4点。
・相手選手を掴んで引き倒したか
・相手選手の動きを掴んで制限したか
・相手選手を掴んで捻ったか
・相手選手のジャージがプレー中に伸びたか
ディフェンスパスインターフェランスのカテゴリーはこれらに限られたわけではないが、少なくとも以下の6点。
・ボールに対してプレーしていない守備選手が速いタイミングで接触したか
・ボールを捕球しようとして、レシーバーに背後からぶつかっていないか
・レシーバーのパスキャッチを邪魔して、腕や体を掴んで制限していないか
・レシーバーの体を横切るように伸ばした腕で、パスキャッチの機会を邪魔していないか
・ボールに対してプレーするのではなく、接触により守備選手がレシーバーを故意にパスコースから押し出していないか
・ボールに向かおうとしているレシーバーをつかんで制限し、ボールが到達する前にレシーバーの体を回転させていないか
オフェンスパスインターフェランスのカテゴリーはこれらに限られたわけではないか、少なくとも以下の2点。
・レシーバーが守備選手を手で押すなど突き当たって、空間を作っていないか
・レシーバーをカバーしようとしている守備選手に接触してパスカバーを妨害していないか
腰から下へのブロック及び不正なブロックについては毎年ルールが変わっている。
米国では腰から下へのブロックをインテリアラインマン(スクリメージライン上の両端にいないラインマン)以外の選手が行うことを禁止する方向に進んでいる。
不正なブロックに関してNCAAでは今季から相手の死角からの強力な接触を伴うブロックはパーソナル・ファウルとなった。日本の公式規則でも2019年秋季から本規則への変更が予定されている(※正式には7月上旬発表予定)。
ターゲティングについて米国ではヘルメットのクラウン(フェイスマスク上端より上の部分)で接触することが増えている。選手やコーチからは「故意ではない」と、反則に対して抗議を受けることもあるが、「フットボールを行う一流のアスリートが当たる瞬間にクラウンでの接触を避けることはできる」と、レモニア氏。
「審判の仕事は試合を安全かつ、円滑にコントロールすることです。例えば選手やコーチの皆さんからすれば毎プレー、ホールディングは起こっているように見えるかもしれません。確かにルールブックに照らし合わせたホールディングは毎プレー起こっています。しかし、全てを反則にするかは審判のフィロソフィー(判断基準)に従って判断されている」
レモニア氏は審判のフィロソフィーについて3つの基準を挙げた。
1、プレーに関わりのあるところで反則が起きているか
反則をしたことで相手選手のアドバンテージを阻害しているか。例えば左オープンのランプレーの最中に右のオフェンスタックルがディフェンスラインを掴んでいても、反則とは判断されないなどが挙げられる。
2、選手の安全が確保されているか
プレーに関わりのない場所で起きた反則でもターゲティングのような激しいコンタクトを伴う場合は反則として判断される。
3、明らかな反則だったか
例えばQBサックを受けそうになったQBがタックルボックスから外に出て、パスを投げた際に本来ならLOSを超えなければインテンショナルグラウンディングの反則だが、LOSの手前30センチなど届くか届かないかほどの距離の場合は反則と判断されないなどが挙げられる。

関東審判部の審判に加え、日本社会人協会所属チーム、関東学生連盟所属校の監督、コーチを含めた72名が参加した