12月18日、第31回アメリカンフットボール日本社会人選手権ジャパンエックスボウル(JXB)で、初の連覇を狙う富士通フロンティアーズ。今季主将としてチームを率いているWR宜本潤平(立命)は、勝負強さを持っている選手だ。
レギュラーシーズン最終節のオービック戦は同点タイブレークとなったが、オービックにFGを先行された裏の攻撃で、7ヤード、15ヤードと2度のパス捕球、7ヤードのランと、3度ボールを持ちゴール前2ヤードに迫り、WR中村輝晃クラーク(日大)への決勝TDパスにつなげた。
宜本が勝負強さを発揮する選手という信頼を確立したのは、3年時に主将を務めた大産大附属高時代時代のクリスマスボウルだった。
早大学院との試合は前半、大産大附属高が13対0とリード。内容的にも圧勝ペースだった。
「後半、何点差をつけてやろうかと思っていました」
宜本はハーフタイム時に勝利を確信していたという。
しかし、前半終了間際に当時好パッサーQBとして活躍していた荒木裕一朗(立命/現・ノジマ相模原ライズ)が肩を負傷し戦線離脱。そして、後半は早大学院の猛反撃に合い、試合終了1分20秒前にTDを奪われ20対21と逆転されてしまった。
「逆転された時は正直負けたと思いました」
宜本は試合を諦めかけていた。
状況は絶望的といっていいものだった。FGまで持っていけば勝てるという状況には気づいていたが、キッカーはサッカー部から転部してきたばかり、フットボール歴1年に満たない遠藤昇馬(日大・現ホークアイWR)だったこともあり、確実に勝利するためにはTDを奪うしかなかった。また、荒木の代わりに出場していたQBに2ミニッツ攻撃を成功させるだけのパス力はなかったため、パスで追い上げることは不可能という、普通に考えれば敗戦の確率の方が高い条件が揃っていた。
しかし、当時からのチームメイトで現在もフロンティアーズで共にプレーしているDL神山恭祐(立命)の「まだ1分20秒ある。逆転できる」という言葉で奮い立った。
早大学院がキックオフ時にオフサイドの反則を犯し、蹴り直しのキックも短いキックだったこともあり、自陣45ヤードから始まったドライブで、大産大附属は3回連続スイーププレーで2度攻撃権を更新。そして、リバースした宜本から反対サイドのレシーバーにダブルリバースし、そこからパスコースに出た宜本へパスをするスペシャルプレーを成功させてゴール前15ヤードに迫った。
このプレーはこの日のゲームプランには含まれていなかったが、試合の前日練習時に神山に「練習していたあれを合わせておけば?」と言われて、アフター練習で合わせていたものだった。大産大附属高の山嵜隆夫監督からは、「50点差をつけたら使ってやる」と言われていたものだった。そして、連続して展開したスイープは大産大附属の基本プレーであり、1年間で最も練習したプレーだった。
このプレー後に再びスイープ2連発で終了13秒前に再逆転TD、TFPの2点コンバージョンもスイープで成功させて、大産大附属高は28対21の勝利をおさめた。
「最後まで諦めてはいけないこと、本当に追い詰められた場面では一番練習したものが出ること、そして練習前後の遊びの練習も含めて、ほんの少しの準備の差がここ一番で役に立つことがある。あのクリスマスボウルから多くのことを学びました」
絶体絶命のピンチを乗り越えたクリスマスボウルの経験は、その後のフットボール人生に大きく影響を及ぼしたと宜本はいう。
あの時と同じ9番をつけ、富士通の主将としてJXBに臨む宜本は、どんな状況になっても最後まで諦めないフットボールを展開し、初の連覇へと導く決意だ。
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