NFL

NFL選手ウィッツマンが語る
国際試合が繋いだ友情と
NFLの競争

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高校生の時、2009年のグローバルチャレンジボウルに出場した経験を持つNFL選手、OLブライアン・ウィッツマン

2011年3月11日、東北地方を中心に、甚大な被害をもたらした東日本大震災から9年。関東学生アメリカンフットボール連盟では、当時、被災地への救援・支援のために米軍が展開した『トモダチ作戦』への感謝を込めて、2012年にトモダチボウルを設立した。日本国内および隣国の米軍基地内の高校とアメリカン・スクールからなる米国選抜と、関東学生連盟、東北学生連盟所属の19歳以下の選手を中心とした選抜チームによる国際親善試合だ。今年も3月8日に予定されていたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防の観点から、残念ながら中止となった。

国際試合は19歳以下の選手にとって、大きなインパクトを与える経験になる。トモダチボウルの前身、2008年と2009年に川崎球場(当時・現富士通スタジアム川崎)で行われていたのがグローバルチャレンジボウル(GCB)だ。GCBはU19日本代表とU19米国代表が対戦するだけでなく、米国代表選手たちは日本でホームステイ生活を体験する、文化交流としても価値のあるプログラムだった。

2014年にヒューストン・テキサンズにルーキーFA選手として入団して以来、ニューオリンズ・セインツ、ダラス・カウボーイズ、カンザスシティ・チーフス、ミネソタ・バイキングス、シカゴ・ベアーズ、クリーブランド・ブラウンズ、マイアミ・ドルフィンズ、カロライナ・パンサーズと9チームを渡り歩いているOLブライアン・ウィッツマン(サウスダコタ州立大)は、2009年のGCB米国代表メンバーの一人だ。今年2月初旬に当時ホストファミリーだった田中敏之さんを尋ねて来日したウィッツマンに、当時の経験と、NFL選手の競争の現実を聞いた。

ウィッツマンさんはいつからフットボールをはじめましたか?

ウィッツマン 10歳の時から、バックヤードフットボールをプレーしました。ラインはいなくて、全員がボールをキャッチできるような遊びのフットボールを友達とプレーしていました。

高校時代のポジションは?

ウィッツマン 攻守兼任ラインとしてプレーしていました。2年生まではTEとしてプレーしていました。

高校の時、GCBでプレーしたことはウィッツマンさんにとってどんな経験、思い出として残っていますか?

ウィッツマン 米国中の様々な地域から集まってきた選手たちとプレーしたことは貴重な経験でした。何人かとは今でも連絡を取り合っています。今回、来日したのは、ホストファミリーの田中さんと会いたいと思ったのと、ラーメンを食べたいと思ったからです(笑)。

GCB出場時は、将来NFLでプレーすることは考えていたのですか?

ウィッツマン 当時はシニアでしたが、まだ大学への進学のことだけを考えていました。

奨学金のオファーは?

ウィッツマン サウスダコタ州立大学をはじめ、いくつか来ていました。

何故、サウスダコタ州立大学に進学したのですか?

ウィッツマン 勉強をしたかったシビルエンジニアリング(土木工学)のプログラムがあったのと、フットボールのコーチングスタッフが家族のような関係を築くコーチだったので、サウスダコタ州立大に進学しました。

NFLを意識したのは?

ウィッツマン 3年生の時にNFLのチームがアプローチしてきてからです。

当時のサイズはどのぐらいですか?

ウィッツマン 高校の時は113キロでしたが、1年で15キロ増やして128キロ、大学3年生の時は143キロぐらいありました。私のサイズは平均より上ぐらいです。

米国の選手は高校から大学に上がる時に爆発的に大きくなる印象ですが、どんなトレーニングプログラムがあるのですか?

ウィッツマン カフェテリアでたくさん食べるように言われます。カフェテリアではお金を気にせずにいくらでも食べていいことになっています。倒れても食べろと言われました(笑)

ウエイトトレーニングは?

ウィッツマン 週4回プログラムされていました。シーズンに入るとリカバリーが必要なので、週2回に回数は減ります。

NFLでも同じですか?

ウィッツマン 試合に出場している選手はシーズン中、それほど強度の強いトレーニングはしません。基本的にはオフシーズンに向上を目指して、シーズン中はメンテナンスするという考え方です。ただ、試合に出場していないプラクティス・スクワッドや控え選手はシーズン中もたくさんトレーニングしています。

2018年、シカゴ・ベアーズでプレーしていた時のウィッツマン photo by Jonathan Daniel/Getty Images

様々なNFLチームでプレーされてきましたが、NFLのロースターに入る競争は、どんな緊張感があるものなのでしょうか?

ウィッツマン 今まで9チームでプレーしてきましたが、ロースターに入る争いはとてもストレスがかかるものです。何が起こっても、自分の才能を常にアピールして、自分のできることをすべてやるという気持ちで戦っています。

たとえば、カウボーイズにいた時は、トレーニングキャンプのときには三番手でしたが、キャンプの前に一人の選手が引退して、二番手として、自分の実力をたくさんアピールするチャンスを得ることができました。

9チームの中で一番居心地のいいチームはどこでしたか?

ウィッツマン カンザスシティ・チーフスは良かったです。OLがとても団結していて、とてもいいチームでした。OL担当のアンディ・ヘック・コーチも非常にポジティブな指導をしてくれました。

NFLのOLとして一番大事なことはなんですか?

ウィッツマン 大学では体格やパワーだけでごまかせる部分がありますが、NFLではフットワークや手の使い方、低い姿勢を保つことなど、すべての基本技術を完璧にしなければならなりません。ファンダメンタルが一番大切なことであり、それがないとNFLでプレーすることはできません。NFLのDLに対しては少しでも隙きがあれば、やられてしまいます。繰り返し練習して、『セカンド・ネイチャー』になる(無意識にできる)くらいにならなければなりません。
また、コーチによってファンダメンタルは変わります。たとえば手の使い方もコーチによっていろいろです。あるコーチはしっかりタイトにグラブしろというコーチもいれば、グラブするとホールディングになる可能性が高いから掴むなというコーチもいます。コーチによって使い分けられなければなりません。

ファンダメンタルの中で一番大切なのは?

ウィッツマン フットワークが一番大切です。対面で動く人に対して、手を使わずに足だけで追いかけるミラー・ドリルなどはどのコーチもよく行います。

次のシーズンはNFLでプレーしますか?

ウィッツマン そのつもりです。今はドラフトが終わるのを待っています。ドラフトの前に契約をしてしまうと、いい新人が入ってきた場合にカットされてしまう可能性があるので、ドラフト後に確実にOLを欲しがっているチームと契約をしたいと考えています。

リタイアした後のビジョンはありますか?

ウィッツマン MBAを取得して何かビジネスをしたいと考えています。連邦政府でインターンをするなどいろいろな経験をして、将来何をするのか、いくつか候補を絞っているところです。

ウィッツマンのホストファミリーだった田中敏之さん(左)と、田中蔵馬さん(右/元オール三菱QB)

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